歌ってみた をやってみた(MIXレポート)

歌ってみた”をやってみたところ、手法公開のリクエストを幾つか頂きましたので、公開しちゃおうかなと思います。先ず投稿したやつを貼っておきますね。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm31771641

MIX師さん達と技術的な情報交換をした事が無いので、異質なやり方かもしんないけど、私の出す音はこんな感じで出してますといったところです。でも、今回は自分的にも異質な方法でやったんですよね。自分の腕試し的な事を考えて、できるだけ一般的に普及してそうな機材やプラグインをできるだけチョイスしたりしたので。だから今回は普段の私と私なりの今回やった曲に対してのアンサー的なハイブリッド的なMIX手法とご理解ください。

では、順を追って各工程で使用したものと使い方についての説明をします。いちいちメモってたわけじゃないので、細かい設定まで書き切れてない事は承知の上で読んでください。
尚、MIX観点にフォーカスを当ててるので、補正についてはターゲットとしていません。長くなるのでコーラスについては割愛させてもらいます。

◆マイク
以前に当ブログで、マイクは高いものでなくても結構良い具合まで追い込めます的な事を書いていたので、ここで高いマイク使っちゃうのもなあと思い、今回は友人に貸していたRODEのNT1-Aがたまたま自宅に戻ってきていたので、これを使用しました。歌みた界隈でも結構普及してるマイクの1つだと思います。
自宅で録りましたので、そのままだと反射音がすごい入るって事で、KaoticaのEyeballというマイクをスッポリ囲ってしまう吸音材を使っています。

◆マイクプリアンプ
これも優先順位としてはオーディオインターフェースよりも低いと言っていた手前、単体の物は使ってません。
オーディオインターフェースにビルトインされている物を使っています。

◆オーディオインターフェース(以下I/F)
UR22辺りがとても普及してそうなのでそれにしたかったのですが、友人に貸し出し中だったので、手元にある中で一番ロースペックなZOOMのUAC-8を使いました。

◆下処理
今回、下処理工程を入れました。これは単体プリアンプやレコスタ定番のコンプ(主に1176系)掛け録りという工程を経なかったので、それをやった様な状態としてからスタートしたかった為、やりました。
SLATE DIGITALのVPCというプリアンプのエミュレーションを薄くかけて、コンプはUADの1176AEを使用。RATIOは1:8で、よくある10時14時(インプットが10時,アウトプットが14時の意)設定からスタートして、オケと大体のレベルを合わせながら適宜レベリングといった具合に下処理しています。
ここで欲しかったのは、単体プリアンプを通した様な質感の付加とテイクのレベル差を小さくするのが目的となります。
UADの1176は数あるプラグインの中で高い評価を得ていますが、コンプとしての挙動はともかく出音についてはそんなに似ていないので、そこまで期待通りにはならなかったと記憶しています。

◆音作り(挿した順に記述)
・WAVES MV2
これは小さい音をでかく、大きい音を小さくするというツール系のプラグインですね。
ブレス音のでかい歌には向かないですが、そうでない場合は音をある程度均一化する為に挿しておいて損は無いでしょう。設定はオケと歌により適宜、です。大きい音の方はいじらずに小さい音だけ大きくするというケースが多いですね。
まあ下処理の延長線上です。

・WAVES VocalRider
自動でオートメーションを書くプラグインです。これ任せでオートメーションはOKとは言えませんが、ざっくり揃える時は非常に便利です。無理矢理な動きはさせず程々に補正させます。オケが2MIXなので、サイドチェインでオケを入れて書かせます。
これも下処理の延長線上。前段の下処理とMV2との合わせ技で、ざっくり適切な設定値であればこれだけでボーカルの音量が結構整ってきてると実感できるはずです。

・FabFilter PRO-Q2
デジタルEQの定番の一角かと思います。これのBrickWallLowCutでばっさりと不要な低域をカットします。

・IK Multimedia T-RackS De-Esser
一応言っておくと、歯擦音(主にサシスセソ)を調整するものです。低域の次は高域の不要部分カットといったところです。
これに関しては、この後出てくるEQと挿す場所が前後する事もあります。というのは、歌に関しては俗にAIRと呼ばれる空気感的な周波数をいじる事があり、そこって歯擦音の周波数と被ってたりするので、順番入れ替えた方が好結果になる事もあったりするのです。

・WAVES Renaissance Equalizer
ド定番EQの1つですね。普段ならこの段にはUADのChandler Limited Curve BenderとかPultec挿すんだけど、定番でやろうという事であえてこのチョイスです。効き方は前述2つとだいぶ違いますが、出したいとこを出して引っこめるとこは引っこめるという基本的なとこは使えますので。
やったのはカットを中心とした音質補正ですね。カット中心で音を作って出すとこはゲインで上げるってゆー基本所作。ブーストはやればやる程音が破綻しやすいので。
ブーストは2.5Khzと4Khz付近が強調される様なカーブを書いたかと思います。

・Eiosis AirEQ
前述のRenaissanceEQでAIRが弄りきれない感が否めなかったので、足しました。今セールで79$かな?SLATEおじさんとこのサブスクでも使えるので、結構使ってる人多いんじゃないかな?ってんで使用。

・Wave Arts Tube Saturator Vintage
これって今フリーなの?昔っから使ってますが、安価だけど非常に優秀なプラグインです。Pultecとかに比べると前段のRenaissanceEQは倍音付加が全然無いので、これで補うといった形です。

・Brickwall Limiter
下処理で結構音量は整ってるんだけど、それでも飛び出るとこ用にリミッターを挿します。Cubaseに標準で入ってるものですね。
普段は抑える用途の他にここでも倍音付加を目論んでChandler Limited Zener LimiterとかAPI2500を挿す事が多いです。正直今回これで代用してみて、ちょっと味付け薄いなぁとは感じました。ある意味クリアとも言えますけど。

・UVI ReLayer
ディレイですね。所謂影を付ける様な効果でディレイタイム189msでフィードバック26%とゆー魔法の設定というのがあって、それを狙って挿してます。
これってテンポによって多少設定変えた方がしっくりくるので、今回はスローテンポな曲って事で、少し長めに設定。フィードバックは寧ろ軽くしたかったので、23%に設定。

 

まとめると、音作りに関しては下処理を除くと下記の様な工程となっており、挿す物は適宜変えますけど基本所作としてはこれと似た様な事をいつもやっています。
ローカット⇒ディエッサー⇒音作りEQ(中高域)⇒音作りEQ(AIRとか補足)⇒倍音付加(前段のEQに依存しても可)⇒ピーク抑え(倍音付加もやりがち)⇒影付け(適宜)

◆音作り(センドリターン)
今回センドリターンについては、リバーブのみ設定しました。数種類を場面で使い分けてますが、ここではメインのリバーブのみ紹介します。
・2CAudio Aether
結構ドライな感じに聴こえる歌に浮かない程度の残響を付加、というのが自分の中での定番です。初期反射はとても目立たないレベルで設定しています。そもそもインサートのディレイで影付けをしているので、ここで強調する必要が無いからです。
残響はこの曲が結構全体的にWETな雰囲気ですので、多めに付加しています。空間の大きさや鳴り方や響きの長さ等をオケと合わせて聴きながら細かく合わせていきました。

◆ミキシング
歌ってみたは基本的にオケがステレオ2トラックですので、歌に合わせてオケを大胆に弄るなんて事はしない前提という事で、逆に歌をオケに合わせていきます。
どの辺りにどの周波数が出てるのか探って、それに合わせて歌の出すとこを決める感じです。私的には、ボーカルはずっと同じ音を発しているわけではないので、この人の声なら絶対にここってポイントを決め付ける事はできないと思っています。なので、オケに合わせてポイントを探って強調するポイントを決定します。
使える時間が少ない時は、聴感上でやる事もありますが、私はちょっとニッチなソフトをよく使います。RolandのR-mixというソフトなんですが、オケのどの辺りにどの周波数が出てるのかを視認する事ができます。


探り終わった後、Renaissance EqualizerとAirEQの段の調整を行います。一番気を使いたい箇所をループ再生して、前述のEQ段の調整と適切なボリュームを探ります。ここでEQ設定とボリュームを決定したら、あとはここを基点にボリュームのオートメーションを書きます。
私はこのオートメーションはとても気を使っているところで、数時間~長ければトータル10時間超使って仕上げます。何故なら、オケに歌が違和感無く混ざって聴こえるとか聴こえないって話をよく耳にするかと思いますが、適切なボリュームコントロールが鍵を握っているからです。音の前後感を出す等、音像構築の際にとても重要なのがこのボリュームコントロールと思います。意図的に小さくとか大きくという演出を除き、すべての時間軸において歌がオケよりも大きくも小さくもない好バランスであるという事がミキシングの最大の焦点と考えます。
因みに今回は行っていないですが、例えばAメロ~Bメロとサビでオケの雰囲気がガラッと変わる様な曲であれば、トラックを分けて結構大胆に設定を変えたりもします。

◆疑似サミング
・SLATE DIGITAL VCC
いつもはアナログのサミングミキサーを通して2トラックに落とすんですが、今回はあえて疑似でやってます。
簡単に言うと、ボーカルトラック,コーラストラック,オケトラック,リバーブトラックをすべて別々にアナログミキサーのチャンネルに送ってまとめるって事をやると、各トラックの境目にエッジが出て音の輪郭が滲まずに分離感が出つつ混ざるんですね。
プロのスタジオって基本的にでっかいアナログ卓がありますよね。あれがDAW隆盛の昨今になっても未だに廃れないのにはそういう理由もあったりするのです。
話を戻しまして、ガチの物使ったら参考にならんだろって事でプラグインを使ってます。SSLのエミュレーションを上記4つの括りそれぞれに挿して、最終段のMIXバスにバス用のものを挿してます。オケとMIXバスには薄く、歌とリバーブには強めに。歌については直列でNEVEのエミュレーションも挿しました。
ミキシングの後に書いてますが、音作りの段階でもうこれは設定してます。上記4つの括りでバスを作って、そこに挿すというやり方です。
さすがに本物とは違いますが、やらんよりはまあマシかなと思います。特に歌にNEVE直列は案外エッジが立っていいかもと思いました。

以上、ここまで長々と読んでくださった方、ありがとうございました。結構具体的に書いたのでこっ恥ずかしいのですが、こんな感じで上記の音源は作られています。
自分と違う手法だなと感じた方は、ちょっと違った事やろうと思った時に気に留めて頂けたらと思います。
また、疑問などあればTwitterや当サイトへのコメントで聞いてくださって構いませんので、お気軽にどうぞ。

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